渡良瀬遊水池の憂鬱
昨日のニュースで、渡良瀬遊水池がラムサール条約に登録されたことが流れた。
ラムサール条約とは湿地の保存に関する国際条約である。
ボクはこの地によく写真を撮りにいくので、複雑な思いでこのニュースをみていた。
渡良瀬遊水池とは栃木、茨城、群馬、埼玉の4県にまたがる広大な貯水(治水)池である。
本来の目的はダム機能であり、尾瀬などの自然の湿地地帯とはまったく意味合いが違う。
この登録を機になにか違う力学が働き始めるのではないだろうかと危惧をする。
そもそもラムサール条約の登録地に指定されることは
植物や野鳥の生息にとって必要な水域があり、
それらが法令に基づいて厳しく保護されなくてはならないわけであって
決して観光化が目的ではないはずである。
世界遺産登録のように歓喜をあげる自治体に違和感を覚える。
そして、ニュースが伝えないもうひとつの疑問。
渡良瀬遊水池を「wikipedia」で調べるとまず最初にこう記述されています
「渡良瀬遊水池(わたらせゆうすいち)は、足尾銅山鉱毒事件による鉱毒を沈殿させ
無害化することを目的に渡良瀬川下流に作られた遊水池である。」
表向きは地域の洪水防止が目的に作られたとありますが
当時の政府が鉱毒の汚染拡散を恐れ、苦肉の策として
この場所を鉱毒の溜池にしてしまったということです。
一民間企業が起こした公害事件により、このような収束を余儀なくされたことは
国にとっても地域にとっても消し去りたい事案であったことは間違いない。
子供の頃、あの池には行くなと言われて育った方もいるのではないでしょうか。
いつしか風化してしまった悪しき歴史の爪あとが
違う形で美化されることに戸惑いを感じる方もいるでしょう。
この渡良瀬遊水池は鉱毒事件から100年経った今でも
鉛などの鉱毒が沈殿しているといわれています。
それが健康に影響があるものなのかはボクにはわかりません。
しかし、そういう歴史を伏せたままラムサール条約に登録されたことで
人々を呼び寄せていいものかとふと思うのである。